札幌のダンサーから引き出すせつ子さん/「そして なるほど ここにいる」前編

山田せつ子さんが札幌のダンサー達と育んだ公演

昨年はCONTE-SAPPORO Dance Centerが共同主催という形で参加させていただいた、日本を代表するベテラン振付家のひとりである山田せつ子さんと札幌のダンサー達のダンス公演が今年も上演されました。
今年は昨年とダンサーが少しだけ変わり、浜田純平さんの代わりに櫻井ヒロさんが入りました。

 

2年目ということで、ダンサー達と山田せつ子さんのお互いの情報や信頼関係がある程度ある状態でのスタート。
昨年は山田せつ子さんのソロ公演+札幌のダンサー達による作品という二部構成でしたが、今年は山田せつ子さんは冒頭で少し出演はされるものの、ダンスナビゲーターとして最前線には出てこない形でした。

 

このダンスナビゲーターという立ち位置についてですが、私は稽古に参加した訳ではないのでハッキリとはわかりませんが、昨年の経過を見ていた中で想像すると・・・

「振付」とは明らかに違う立場で参加されており、山田せつ子さんがコンセプトやテーマ、動きなどは考えていないのだと想像がつきます。
おそらく振付自体は各ダンサーに委ねられており、せつ子さんの役割としては個々に創らせるとかではなく、個々を引き出したのではないか、と。

 

創らせると引き出すの違い

「引き出す」とはどういうことかというと、創らせるよりももっと個々の深部を引きずり出すような。
特に大森弥子さんなんかはそういうところがあったのではないでしょうか。
せつ子さんと弥子さんの組合わせは、やり取りも含めてとても興味深かったです。

 

山田せつ子さんの言葉はまっすぐに鋭くダンサーの深部を突きさし、底から本人も見えていなかった景色を引き出しているのではないかと思ってしまうのです。
そうして引き出された各自の底(?)に今度は山田せつ子さんが違うものを注入し、作品をかたどっていたのではないか・・・と。

 

札幌のダンサー達からすると山田せつ子さんとの出会いは凄く貴重で、刺激的で、ある意味ではコワいことだったのではないかと思います。
山田せつ子さんご自身は「人材育成している、教育している」と捉えていないでしょうし、「一緒にクリエーションをしているだけ」なのではないでしょうか。

 

しかしながら、本番を共にした経験はダンサーを飛躍的に育てますし、山田せつ子さんの豊富な経験や積み上げられた身体哲学を受信することは確実にそれぞれの血肉になる訳で、堂々と「人材育成事業です」と謳うものプログラムよりもよっぽど鍛えられる「贅沢な時間」なのではないか、と。



・・・と、ここまではイントロダクションなのですが、すでに結構な字数になってしまっているので、作品については次の投稿で書きます。

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